Pride and Dust World(HTN)

画家ではありません。 イラストレーターでもありません。 物語と詩を書いています。 それらと対になる絵を描いています。 Japanese Working Class Artist. 制作依頼はお気軽に。かつてない時代を生きている「今」だからこそ、伝えたいことがある。

since August 25th, 2007/僕が出逢った景色から(3)

『短い物語P&D』は、とても短い物語と、それを表す絵画で構成されています。

連載ではなく、一話完結です。

日常という現実。

空想してしまうという現実。

夢を見るという現実。

それらが混在する混沌とした日々から生まれた物語。

時には共感できないエンターテインメント。

「かつてない時代を生きている今だからこそ、伝えたいことがあります。

当公演にアンコールはございませんので御了承下さい。 それでは間もなく開演です。」

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■短い物語P&D『カウントダウンへ(2/2)』

 

体を起こし、ガラスに顔を押し付けて何度も確かめた。 見えるのは絶え間ない水しぶき。 気づけば、車窓には遠くで触れ合う水面と夕方の空だけ。 反対側を見ても同じ。 無理やり納得するなら、雨で増水した区間を走っているのだろうと推測する。 もしくは、この路線はこういうものなのかもしれないと考えてみる。 この時の僕は、やけに平常心だった。 この新鮮な時間を楽しもうと思った。 やがて同室の客の不在に気付き、僕はひとりを満喫するように眺めた。 いつしか雲に隠れたまま夕日が並走していた。 いろんな妄想を繰り返していた僕は、遥か遠くの水面に気になる影を見つけた。 それは一隻の船だった。 古い外国の帆船みたいなシルエット。 船首には見覚えのある動物の頭部。 ……羊? 確かめる時間は与えられず、雲が途切れた。 太陽は、この日最後のあいさつをするようにまっすぐ僕を見た。 眩しさで体ごと消えてしまいそうになる。 やがて視界が元に戻ると、もう水上の旅は終わっていた。

夕日を背にした影色の街並が通り過ぎて行く。 後ろを振り返ったけれど、見えたのは都会の景色だけだった。 そして、終着駅の地で迎えた大晦日の夜。 「大きな海と 大きな空と 大きな旗と 君だけの……」と僕は歌った。 その時、僕は思い出していた。 この旅には、未来を考え直すというもう一つの目的があったことを。 それから新年へのカウントダウンの後、僕は笑顔で拳を突き上げていた。  ~終わり 

 

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【作話】

■タイトル:『カウントダウンへ(2/2)』

■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)

■制作年:2008

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【画像】

■タイトル(Title):『カウントダウン』

 

 

 

☆みな様の訪問に日々感謝しております。