since August 25th, 2007/僕が出逢った景色から(2)
『短い物語P&D』は、とても短い物語と、それを表す絵画で構成されています。 連載ではなく、一話完結です。
日常という現実。
空想してしまうという現実。
夢を見るという現実。
それらが混在する混沌とした日々から生まれた物語。
時には共感できないエンターテインメント。
「かつてない時代を生きている今だからこそ、伝えたいことがあります。
当公演にアンコールはございませんので御了承下さい。 それでは間もなく開演です。」
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■短い物語P&D『カウントダウンへ(1/2)』
時刻表を確認したのは昨日の夜。 僕は初めて寝台特急に乗ることを決めた。 この時、鉄道への興味はゼロ。 席の予約すらしていない。 けれど当日、意外にも空席があった。 切符を買ってホームへ向かう。 特に旅の道程を整理していなかったせいか、列車が到着するまでの時間は忙しかった。 乗降場所や席の位置、財布の中身まで。 素人の高ぶりがにじみ出ていたに違いない。 やがて汽笛が届き、白い鬣を伸ばしたような黒い車輌が近づいてきた。 黒い獅子の蒸気とブレーキの音で駅が一斉に緊張する。 気づけば他に乗客がいなかった。 昼間とはいえ十二月。 今日は三十日だから、まあ不思議ではない。
「はやく乗りな」 客車は止まり、そう言っている。 僕は窓に映った自分から目を反らし、扉が開くのを待った。 というのが旅の始まり。 出発はここ「KYOUTO駅」で、終点はHOKKAIDOUの「SAPPORO駅」。 約三十時間の長旅だ。 この旅の目的というのは、北の大地のドーム球場で行われる催し。 でも僕が話したいのは別の事だ。 どの辺りで起きたことだったのか覚えていないけれど、あれが夢とは思えない。 揺れる寝台の上で眠ってしまった僕は、沈み行く太陽のきつい合図で起きた。 目つきを悪くしながら、外の世界に焦点を合わせる。 窓にぶつかる飛沫が見えた。 雨が降りだしたのか。 けれど、それは違っていた。 なぜか列車は、水上を走っていた。 ~続く
■タイトル(Title):『カウントダウンへ(1/2』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
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【画像】
■タイトル(Title):『寝台特急、北へ』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
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