Pride and Dust World(HTN)

かつてない時代を生きている「今」だからこそ、伝えたいことがある。

since August 25th, 2007/僕が出逢った景色から(20)

『短い物語P&D』は、とても短い物語と、それを表す絵画で構成されています。
連載ではなく、一話完結です。

日常という現実。
空想してしまうという現実。
夢を見るという現実。
それらが混在する混沌とした日々から生まれた物語。
時には共感できないエンターテインメント。

「かつてない時代を生きている今だからこそ、伝えたいことがあります。
当公演にアンコールはございませんので御了承下さい。
それでは間もなく開演です。」

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■短い物語P&D『くぐりぬける』(1/2)

まだ部屋の奥まで届かない光が、窓辺のフローリングを焼いていく。
その上を揺れながら通り過ぎる控えめな風。
今日の太陽はとても機嫌がいい。
けれど、誰も目を合わせようとはしない。

そんな昼の、突然の雨。
旅の途中の通り雨。
どこへ行こうというのだろうか。
僕はベランダに出た。
同時にハトが飛び立つ。
雨宿りなのか、それとも巣をつくるつもりだったのか。
お互い少しだけ驚いた。
僕は小さくなる一羽を追って、西の空を見た。
そして、直ぐに虹を見つけた。
これまで虹を見るのは写真ばかりで、実際に見たことは少ない。
そのせいか、今を逃したらもったいないという想いが湧いた。
習慣的に写真を撮ることのない僕は、撮影するよりも虹をくぐってみたいと考えた。

 

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こうして、静かな休日の午後が動き出した。
出不精の僕としては、らしくない迅速な行動が始まる。
虹が架かる時、どちら側から始まって空に架かるのか。
そんなことを考えながらの身支度。
長い間休んでいた自転車を起こしに玄関へ向かう。
折り畳まれているオレンジ色をした小さなボディー。
そいつが目を覚ますのはタイヤに空気を入れてからだった。
着替えた僕の方は、らしくないサングラスを装着。
持ち物は携帯とサイフ。
あとは鍵束だった。
虹をくぐるなんて考えは、単なる思いつき。
このお出かけは軽い運動のつもりだ。
なんとなく自転車に乗って風にぶつかっていきたい。
それは、かつてない時代の夏に挑むような感覚。
喉が渇いたら、コンビニに寄ればいい。

僕は生家のある西の方へ向かった。
今は高層ビルが邪魔をして住んでいる部屋からは見えない場所。
そこが、なんとなく目的地だった。  ~続く


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【作話】
■タイトル(Title):短い物語P&D『くぐりぬける』(1/2)
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
※物語はブクログのパブーにて電子書籍として配信しています。KindleKoboからも配信中!
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【画】
■タイトル(Title):『くぐりぬける~SCENE1』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
■画材:ボールペン、鉛筆、画用紙、スプレー
■作品サイズ:B5サイズ相当の画用紙を使用。縦19cm×横14cmの枠内に描画。
■販売価格:非売品
※『短い物語P&D』を表す絵画は、主にリアル展示による公開です。