Pride and Dust World(HTN)

かつてない時代を生きている「今」だからこそ、伝えたいことがある。

since August 25th, 2007/僕が出逢った景色から(14)

『短い物語P&D』は、とても短い物語と、それを表す絵画で構成されています。
連載ではなく、一話完結です。

日常という現実。
空想してしまうという現実。
夢を見るという現実。
それらが混在する混沌とした日々から生まれた物語。
時には共感できないエンターテインメント。

「かつてない時代を生きている今だからこそ、伝えたいことがあります。
当公演にアンコールはございませんので御了承下さい。
それでは間もなく開演です。」

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■短い物語P&D『世界の果て~底へ』

汚れた歩道を空き缶が転がっていく。
風がひとり遊ぶ夜。

オレは歩いていた。
それは中心が移動するということ。
すなわち世界が動く。

要らないものは外へ放り出すのが決まり。
吸い殻は足下へ。
紙屑は後ろへ。
釣り銭は……任せた。

今日は出張。
宿泊しているホテルに戻る前に一杯。
契約先のメンバーと同期の仲間。
それなりの肩書きが心地よくもある席だった。
その帰り道、寂しく感じる街並があった。
夜空が、いつもより広い。
ただ高層ビルが少ないだけ。
それだけのことなのに、世界の果てがすぐそこにあるように感じる。
あの建物の向こう側には、何も無いんじゃないか。

好んで飲まないオレの足取りは仲間より少しだけまし。
だから、遠くを見ながらでも群れから遅れることはなかった。
そうやってしばらく歩いていた。
そして、何かにぶつかった。
いや、誰かに。
右肩に軽い衝撃。
そこまでしか覚えていない。


誰もが手を放す時が来る。
「お前とは縁を切る」
それでも“手を差し出す”ヤツがいると信じている男。
いなかったとしても、誰かが“手を差し伸べてくれる”と信じている。
そんな勝手な想い。
思い出せば、いつも一言余分。
目が合えばすぐに発火。
先に手が出る悪い癖。
偽りの握手で、手に入れたモノ。
企てた感動話。
人工の涙。
「戦場を想像することができますか」と、ナレーションに問われた時の不快感を思い出した。
日に日に増す怒りの旗を掲げて、オレだって戦っていたんだ。

 

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永遠ってのがあるけど、オレには突然の終わりか。
だけど敗因なんて考えたくない。
今までの稼ぎだって数えたくない。
気取って歩いた道程が恥ずかしい。
もう先には道が無いらしい。
滝の如く落ちる先に海も無い。
下に見えるのは、憎しみで紅く震える炎。
煮えたぎる器を支えている。
見えそうで見えない中身。
この大地から見放された時、ここがオレの「世界の果て」らしい。

ここから堕ちるのか。
それとも、ここで思いとどまるのか。

誰かの声が聞こえてきた。
オレを何度も呼んでいる。
大丈夫だ、まだ戦える。  ~終わり


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【作話】
■タイトル(Title):短い物語P&D『世界の果て~底へ』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
※物語はブクログのパブーにて電子書籍として配信しています。KindleKoboからも配信中!

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【画】
■タイトル(Title):『世界の果て~底へ』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
■画材:ボールペン、鉛筆、画用紙、スプレー
■作品サイズ:B5サイズ相当の画用紙を使用。縦19cm×横14cmの枠内に描画。
■販売価格:10,000円(税込)
※『短い物語P&D』を表す絵画は、主にリアル展示による公開です。