since August 25th, 2007/僕が出逢った景色から(5)
『短い物語P&D』は、とても短い物語と、それを表す絵画で構成されています。
連載ではなく、一話完結です。
日常という現実。
空想してしまうという現実。
夢を見るという現実。
それらが混在する混沌とした日々から生まれた物語。
時には共感できないエンターテインメント。
「かつてない時代を生きている今だからこそ、伝えたいことがあります。
当公演にアンコールはございませんので御了承下さい。
それでは間もなく開演です。」
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■短い物語P&D『カクタス~SCENE2
どれくらいの時が砂を運んでいっただろう。
風の通り道が繰り返し描かれ、カクタスの影も動いては消えた。
そんなある日、カクタスの前に男が現れた。
喉の乾きに負ける一歩手前。
その場に倒れた男の右頬にトゲが刺さる。
すると、カクタスの中に男の気持ちが流れ込んで来た。
怖いくらいの勢いで。
嘘の厚み。
不平不満の日記。
普段着のような見えない刃物。
もう子供じゃない。
でも大人ともいえない。
カクタスは知った。
男は自分を戒める旅の途中なのだと。
まるで誰かの身代わり。
カクタスは全身で伝えた。
『死んじゃだめだ』
男は残る気力でカクタスに手を伸ばした。
泣かずに溜まっていた涙は、旅人の喉を潤した。
それはもう濁ってなどいない。 ~完
【作話】
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■タイトル/短い物語P&D『カクタス~SCENE2』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
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【画】
■タイトル(Title):『カクタス~SCENE2』
■作家名(Artist):環樹涼(RYO KANZYU)
■制作年:2008
■画材:鉛筆、画用紙、スプレー
■作品サイズ:B5、縦19cm×横14cmの枠内に描画。
☆みな様の訪問に日々感謝しております。